MTF の最適化方法


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概要 : この記事では、MTF オペランドの動作、サンプリング方式の選択方法、利用可能なアルゴリズム、MTF を最適化するうえで最も優れた方法について説明します。

著者 : 
Mark Nicholson

公開日 : 
2007 年 5 月 7 日

サンプル ファイル :


対象 : 
最適化



MTF とは

変調伝達関数 (MTF) は光学系の性能を記述するうえで重要な方法です。結像光学系にフーリエ理論を適用することで得られる MTF は、観察対象のシーンに置いた一定の空間周波数の像が示すコントラストを記述します。

空間周波数は、フォーカル像空間では mm 当たりのサイクル数、アフォーカル空間ではミリラジアンなどの角度当たりのサイクル数で表します。
正弦波に対する MTF 応答では「サイクル」が正しい用語です。「ラインペア数」という用語も多く使用されますが、厳密にいうとラインペア数は、正弦波による評価ではなく、バー パターンによる評価にのみ適用するものです。Zemax では、バーと正弦波のどちらを使用した場合でも MTF を計算できます。



上記のビットマップ像解析ウィンドウを見ると、3 人の少年が表示されている部分では「良好」な像質1が得られていますが、この「良好」の判断基準について検討してみます。各種の線画像のコントラスト比から、形成された像の品質を定量的に示すデータが得られます。MTF は、物体から像への変調の伝達を空間周波数の関数として記述したものです。レンズ性能の仕様や、レンズを設計する際の最適化や公差解析の目標値として広く使用されています。



上記のレンズの MTF プロットは、レンズが対応可能な最大空間周波数を上限として、任意の空間周波数で得られるコントラスト比を示しています。ここでは、表示する最大空間周波数を 100 サイクル/mm に制限しています。この図には、F ナンバーが同じで無収差のレンズによる回折限界の性能も参考として示してあります。MTF プロットを熟知すると、像質を一目で評価できるようになります。

[1] ここで見られる見かけの像質は画面の解像度と画像の圧縮によって劣化しています。Zemax で生成した時点での元の画像は写真品質です。詳細は、記事「写真のようにリアルな像を生成する方法」を参照してください。


MTF の最適化方法

RMS 波面収差がゼロに近付くに伴い、MTF は回折限界の性能に近付きます。したがって、目的とする空間周波数応答の実現に向けて光学系を最適化するときは、デフォルトの RMS 波面評価関数が優れた着手点になります。最適化の進捗につれて、明示的な MTF 最適化オペランドに適宜切り替え、光学系性能に最終的な調整を実施します。

MTF の計算には波面収差の計算よりも長時間を要するので、最初に波面収差を基準として最適化することを強くお勧めします。さらに、光学系に良好な性能が得られていない段階で直接 MTF 最適化を実行すると、処理が効率的に進行しない可能性があります。例えば、前ページに示した画像の形成で使用したレンズで、合焦していないだけの状態で MTF 最適化を実行すると、その値は下図のように一度ゼロまで減少してから、再び増加に転じることがあります。



これは偽解像と呼ばれる現象であり、ローカル最適化の計算が停滞する原因となります。MTF が向上する空間周波数域になる前に、MTF が最悪になる空間周波数が存在するからです。ハンマー最適化やグローバル最適化はこのような現象に対処できますが、ほとんどの場合、MTF プロットで最初の最小値が現れる空間周波数よりも低い領域に、目的の空間周波数がすべて収まっていない限り、波面収差を対象として最適化を実行することが最良の方法です。この最適化が完了してから、特定の MTF 目標値による最適化に進みます。


回折 MTF の最適化

解析機能で使用する MTF アルゴリズムは、フラウンホーファーの回折理論に基づいています。このアルゴリズムでは、レンズが対応できるすべての空間周波数で MTF が示す特性をグラフ化します。この方法では、瞳まで追跡した光線のグリッドを高速フーリエ変換します (このため、FFT MTF と呼ばれます)。得られる MTF は、正弦波を物体としたときの変調を空間周波数の関数として表したものですが、必要に応じて実数、虚数、位相、または矩形波の応答を得ることもできます。

普通、最適化では特定の空間周波数のみが必要なので、レンズが対応可能な空間周波数全域で MTF を計算する必要はありません。
したがって、特定の空間周波数で MTF を計算する MTF* オペランドでは GRID パラメータを使用できます (詳細はユーザー ガイド参照)。このパラメータにより、グラフィック ウィンドウで使用するグリッド法と、まばらなサンプリングによる高速な計算法を切り替えることができます。まばらなサンプリング法がデフォルトであり、ほとんどの最適化ではこの方法を使用することをお勧めします。

まばらなサンプリングによる計算は、ガウシアン求積法に似た考え方を採用しており、きわめて短時間で収束し、グリッド法に比べてはるかに少ない光線本数で任意の精度の MTF を計算できます。
最も重要なことは、フラウンホーファーの理論を適用できる条件下であれば十分な精度が得られるという点にあります。

以下の表は、サンプリングを徐々に多くしながら、収束と収束に要する時間からこれら 2 つの方法を比較したものです。Zemax 付属のダブルガウスのサンプル ファイルを使用し、50 lp/mm の空間周波数に対して軸上の多色 MTF を計算しています。

http://forum.zemax.com/Uploads/Images/7bf48e0d-a5e7-4c20-8ad7-6349.gif

以下の表は、上記と同じ MTF を、視野周縁で計算したものです。

http://forum.zemax.com/Uploads/Images/08aa32b0-49d0-4e0e-9b6c-f9aa.gif

一般的に、最適化や公差解析を目的とする場合、1% の収束であれば十分とされています。
一般的に、MTF の実験的な測定方法では、どのような場合も収束が 0.1% を下回ると演算を反復できなくなります。良好な最適化を実現するうえで極端に高い精度は不要であり、有効数字 3 桁の精度があれば十分です。どちらのアルゴリズムも、サンプリングが適切であれば、任意の精度で収束しますが、きわめて高い精度が必要な場合は、高速アルゴリズムの方がはるかに短時間で収束に達します。

グリッド アルゴリズムの方が高速に収束する条件が 1 つだけ知られています。収差がきわめて大きく、得られる MTF が約 5% を下回る極端に低い値になる場合です。通常、このような条件下で性能を仕様化するために MTF を使用することはなく、最適化や公差解析の目標値として使用することは、さらに少なくなります。Zemax は自動的にこのような条件を検出して、グリッド法に切り替えます。
このような条件では、幾何光学的 MTF 計算の方が適しています。


幾何光学的 MTF

35 mm 一眼レフ カメラ用のレンズを、例えば f/1.8 の絞り開放で使用する場合を考えます。レンズの収差は絞り開放で最も顕著に表れます。レンズを絞るに従い収差は減少し、像質が向上します。しかし、絞れば像質がどこまでも向上するわけではなく、アパチャーが一定値になると、アパチャーでの回折に起因して像質はそれ以上向上しなくなります。

多くの波長数に相当する収差が存在する場合は、幾何光学的 MTF 計算と GMT* 最適化オペランドの使用をお勧めします。この方法は、幾何光学によるスポット ダイアグラムのフーリエ変換を基本としており、ガウシアン求積のサンプリング方式を使用します。

幾何光学的 MTF を使用する最大の利点は、回折の計算に比べてはるかに高速であることです。
幾何光学的 MTF は収差が大きい光学系できわめて正確ですが、このような光学系で回折 MTF が収束に達するには膨大な数のサンプリングが必要になる場合があります。この条件では、幾何光学的な計算の方が 100 倍以上高速であることが普通です。

幾何光学的 MTF の計算でも、光学面での散乱の影響を考慮できます。散乱によって背景の照度が高くなり、MTF が低下します。

幾何光学的 MTF (GMTF) はグローバル最適化できわめて効果的です。グローバル最適化では、すべてのパラメータ空間を効率的に検索し、優れた設計を実現できる領域を特定する必要があるからです。


回折の影響が重要な場合は、必ず回折の計算を使用する必要があります。



ホイヘンス MTF

点像強度分布および MTF の計算では、FFT を使用する方法がよく知られています。これらの方法は、フラウンホーファーの回折理論に基づくものです。そのためには以下の前提条件があります。
  • F/# が十分大きく、スカラー回折理論を適用できる。
  • 回折 PSF のエネルギーが顕著である領域が、光学系の射出瞳から像面までの距離に比べて小さい。
  • 射出瞳が入射瞳に対して著しく歪んでいない。
  • これは、入射瞳での均一な光線分布が射出瞳でも十分に維持されているということです。
  • PSF を正確にモデル化するうえで十分な数のサンプリングが設定されている。
すべてではないものの多くの結像光学系は、FFT MTF アルゴリズムで使用するフラウンホーファー回折理論に必要な簡素化の前提条件を満たしています。

ホイヘンス MTF では FFT を使用しません。
その前提条件は、F/# が十分大きくスカラー回折理論が適用可能であること、および PSF を正確にモデル化するうえで十分な数のサンプリングが設定されていることの 2 点のみです。

ホイヘンスの計算の詳細については記事「点像強度分布 (PSF) とは」を参照してください。

ホイヘンス PSF の計算に必要な簡素化の前提は、ほぼすべての結像光学系で成り立ちます。
ホイヘンス MTF は一般的に FFT (フラウンホーファー) MTF よりも低速ですが、FFT MTF の前提が成立しない条件では、より正確な結果が得られます。

使用できる手法がホイヘンスの計算のみである状況として、主光線を一貫して追跡できない光学系があります。このような光学系では、主光線を中心とした基準球を作成できないからです。多くの波面の計算に基準球は不可欠です。このような条件下では、ホイヘンスの PSF および MTF の計算を使用します。具体例として、以下に示すような複数のミラーで構成する望遠鏡があります。この光学系には、像面に達する主光線の光路がありません。

http://forum.zemax.com/Uploads/Images/9b907cc3-5e51-43b5-ac32-7c0f.gif

主光線を像面まで追跡できないので、光路差 (OPD) を計算できず、したがって OPD から導くパラメータもすべて計算できません。

http://forum.zemax.com/Uploads/Images/56090019-c4df-4043-94e0-b122.gif

ホイヘンスの PSF および MTF の計算では、基準となる 1 本の光線を必要としないため、問題なく動作します。

http://forum.zemax.com/Uploads/Images/57ef91ee-ab06-4997-9c47-a71a.gif

http://forum.zemax.com/Uploads/Images/6b5fa717-1303-43fc-ad85-24dd.gif

このファイルは Zemax に標準で付属しており、{Zemaxroot}\Samples\Non-sequential\Miscellaneous\Multiple mirror telescope.ZMX に置かれています。

ホイヘンスの方法の最後の利点は、複数のコンフィグレーションにわたって MTF を加算できることです。この方法も複数ミラーの望遠鏡で使用できますが、主鏡が遠く離れているためにベースラインがきわめて長い場合に特に効果的です。この場合、一般的な入射瞳の使用は適切ではありません。主鏡に到達する光線が少なすぎて効率的に計算できないからです。この特殊な条件に対応できるのはホイヘンス MTF の計算のみです。

ホイヘンス MTF による最適化または公差解析には MTH* オペランドを使用します。


まとめ

変調伝達関数 (MTF) は光学系設計の重要なパラメータです。Zemax には、その値を計算するためのアルゴリズムがいくつか用意されています。
  • フラウンホーファー理論に基づく FFT は最も広く使用されている手法です。Zemax は、レンズが対応するすべての空間周波数での MTF を計算し、周波数に対するグラフとして表示します (必要な周波数についてのみ MTF を表示するオプションもあります)。MTF を対象とした最適化や交差解析では、目的の空間周波数についてのみ計算が実行されるので、特定の精度を得るために必要な時間も光線数もはるかに少なくなります。必要に応じて MTF 計算にグリッド法を使用することもできます。
  • 収差が大きい従来の光学系では、MTF の近似値を幾何光学的 MTF できわめて迅速に計算できます。この手法は、RMS スポット半径の最適化と同等の速度で最適の MTF を得る「素地」設計に適しています。
  • フラウンホーファー理論の前提が成立しない光学系や主光線を追跡できない光学系では、ホイヘンスの計算法を適用できます。この方法では、信頼性に優れた MTF が得られます。この手法の唯一の欠点は速度です。

いずれの方法を使用しても、RMS 波面収差がゼロに近くなるに伴い、MTF は回折限界の性能に近付きます。したがって、最初の最適化では、デフォルトの RMS 波面評価関数の使用を強くお勧めします。また、MTF プロットに最初の最小値が現れる空間周波数よりも低い帯域に、目的とするすべての空間周波数が収まるまで、MTF による最適化を開始しないことも重要です。

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