Zemax で利用可能な散乱モデル


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概要 : この記事では、Zemax で利用できる面散乱およびバルク散乱モデルの概要を紹介します。

著者 : 
Sanjay Gangadhara

公開日 : 
2010 年 5 月 26 日

サンプル ファイル :


対象 : 
よくある質問



はじめに

どのような光学系でも、光は面の粗さなどによって境界面で散乱し、光と粒子との相互作用によって体積のバルク内部で散乱します。
これらの散乱現象は、どちらも Zemax のノンシーケンシャル モードでモデル化できます。

Zemax には面散乱およびバルク散乱を記述する数々のモデルが用意されています。この記事は、これらのモデルの概要を紹介することを目的としています。各モデルの詳細は、Zemax マニュアルの「ノンシーケンシャル コンポーネント」の章、および関連するナレッジ ベースの記事 (ノンシーケンシャル光線追跡→光源、光線分割、および散乱) を参照してください。


面散乱モデル

Zemax には、数々の面散乱モデルが用意されています。標準付属のモデルのほか、ユーザー定義の DLL モデルも使用できます。
一般的に、これらのモデルは次の式のような双方向散乱分布関数 (BSDF) で記述します。

http://forum.zemax.com/Uploads/Images/01f7f915-4762-427f-856d-3e94.jpg

dLs は散乱光の放射輝度、dEi は入射光の放射照度、θは面法線から測定した極角度、φは方位角、添え字の i および s はそれぞれ入射光と散乱光の方向を表します。BSDF は、θとφによる極座標ではなく、ベクトル x で定義することもできます。x は散乱光線と正反射光線間の変位ベクトルを平面上に投影したベクトルです。



詳細は、Zemax マニュアルの「ノンシーケンシャル コンポーネント」の章を参照してください。


標準付属の散乱モデル

ランバーシアン
BSDF = 1/π
  • 散乱光線の投影ベクトルが投影面上で示す確率がどこでも等しくなります。
  • 散乱強度は cos(θs) に従って変化します。
  • 散乱強度は入射角に依存しません。
ガウシアン
BSDF(x) = A*exp[-|x|22]
  • 散乱分布は、方向余弦空間で対称です。
  • 投影平面上のガウス分布の幅はσ の値で決まります。
  • σ の最大許容値は 5 です (σ> 5 では分布がほぼランバーシアンになります)。
ABg
BSDF(x) = A/[B + |x|g]
  • ランダムで等方的な面の粗さに起因する散乱のモデル化に広く使用されています。
  • A、B、g の入力値が ASCII ファイルとして用意されています (<data>\ABg_Data\ ディレクトリ)。
  • 入力値に対する制限 : A >= 0、B >= 1.0E-12 (g ≠ 0 の場合。g = 0 ならば B = 0 とすることができます)。


DLL 散乱モデル


Lambertian.DLL
BSDF = 1/π
  • 標準付属のランバーシアン モデルと同じで、DLL の作成方法を紹介するためのモデルです。
TwoGaussian.DLL
BSDF: ランバーシアンとガウシアンの組み合わせによる分布です。
  • ランバーシアン散乱とガウシアン散乱に割り当てるエネルギーの比率をユーザー側で指定します。
  • 独立した入力である幅 (σ) とエネルギー比率を指定して 2 つのガウシアン分布をモデル化します。
  • エネルギー比率の和が 1 以下であることをユーザー側で確認する必要があります。
Gaussian_XY.DLL
BSDF ではなく、次の確率分布で散乱を記述します。

P(p,q) = (4/(π*σpq))*exp[-((p/σp)2 + (q/σq)2)]
  • 投影平面上で軸方向のガウシアン分布を表します。
  • p は入射平面 (POI) 上にあり、q は POI の法線です。
    • 特別な場合を除き、(p, q) の各軸は光学系の (x, y) 軸に相当しません。
  • σp、σq は 0 を超える値または 1 未満の値とすることができます (0 以上で 1 以下の場合はランバーシアンになります)。
  • 詳細は、記事「ユーザー定義の散乱関数の作成方法」を参照してください。
K-correlation.DLL
BSDF(x) = A*σ2*cos(θi)*cos(θs)/[1 + (B*|x|/λ)2](s/2)
  • 面の微小な粗さに起因する散乱の特性を記述します。
  • ABg に似たモデルであり、角度が小さいロールオフを追加しているので、多くの面仕上げの特性を表すうえで効果的なモデルです。
  • σは、面の粗さの RMS 値を表します。他の入力については記事「K- 相関分布を使用して面での散乱をモデル化する方法」を参照してください。
RI_BSDF.DLL
ASCII 入力で指定する BSDFです。ここまで説明したどの分布も、目的とする光学系のバルク散乱をモデル化するうえで不十分である場合は、独自の DLL モデルを作成できます。その方法を記事「ユーザー定義の散乱関数の作成方法」で紹介しています。


バルク散乱モデル

Zemax には、数々のバルク散乱モデルが用意されています。標準装備のモデルのほか、ユーザー定義の DLL モデルも使用できます。
次式のように、散乱角に対する確率分布関数 (P) でモデルを記述することが普通です。どのような場合でも、散乱の発生確率は指数関数で表されます。

p(x) = 1.0 - exp[-µ*x]

x は光が体積内部を伝搬した距離、µは体積内部での散乱の平均自由光路 M の逆数です (µ = 1/M)。バルク散乱では、光線の軌道のほか、波長も可変とすることができるので、蛍光もモデル化できます (蛍光に関する詳細は記事「バルク散乱を使用して蛍光をモデル化する方法」を参照してください)。詳細は、Zemax マニュアルの「ノンシーケンシャル コンポーネント」の章を参照してください。

標準付属の散乱モデル

角度散乱
P(θ) = 1/2
  • あらゆる角度への散乱確率が一定です。
  • 散乱角の最大値をユーザー入力で設定できます (パラメータ「Angle」)。

DLL 散乱モデル

Bulk_samp_1.DLL
P(θ) = 1/2
  • 標準付属の角度散乱と同じで、DLL の作成方法を紹介するためのモデルです。
Poly_bulk_scat.DLL
P(θ) = Σ ciθi
  • 多項式で記述した角度散乱分布です。
  • 合計する範囲は、i = 0 ~ 12 です (最大 12 次の多項式でモデル化できます)。
Henyey-Greenstein_bulk.DLL
P(θ) = (1/4π)*(1 - g2)/[1 + g2 – 2g*cos(θ)]3/2
  • 微小粒子による散乱の特性を記述します。
  • 生体組織や星間雲などの中で発生する散乱の記述で効果的です。
  • g の入力値の範囲は 10-4 (均一な角度分布) から 1.0 (θ = 0 近辺でピーク状の最大値となる分布) です。
  • 詳細は、記事「Henyey-Greenstein 分布を使用したバルク散乱のモデル化」を参照してください。
Rayleigh.DLL
P(θ,λ) = 0.375*(1 + cos2θ)/λ4
  • 光の波長よりもはるかに小さいサイズの微粒子による散乱の特性を記述します。
  • 平均自由光路を波長でスケーリングします (~λ4)。
  • 詳細は、記事「レイリー モードによるバルク散乱」を参照してください。
Mie.DLL
球ベッセル関数1 の総和で確率分布が求められます。ここまでに説明したどの分布も、目的の光学系でのバルク散乱をモデル化するうえで不十分である場合は、独自の DLL モデルを作成できます。その開始点として、上記の DLL に用意されているソース コードを使用してください。

1. Craig F. Bohren and Donald R. Huffman, "Absorption and Scattering of Light by Small Particles", John Wiley & Sons (1983)

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